アトピー性皮膚炎 -漢方処方解説-

A. 十味敗毒湯

柴胡、桔梗、防風、川、桜皮、茯苓、独活、荊芥、甘草、幹生姜

風湿の柴胡、独活、防風、荊芥と排膿の桔梗、桜皮、川、茯苓、甘草を配合した化膿性皮膚疾患の初期に用いるために、作られた処方である。
荊防敗毒散から取捨して作られた処方である。
湿疹・皮膚炎群や蕁麻疹などに応用されるが、利湿剤や清熱剤の配合が少なく、単独ではあまり効果は強くない。
消風散に比べて乾燥性で、冬季に悪化する傾向の皮疹に適応する。
浅田流では、連ぎょうを加えている。
清熱解毒という意味では、より優れた処方になると考えられる。
また、本方には化膿後の硬結の吸収を促進させる作用もあると考えられる。
湿疹や皮膚炎の湿熱の強い場合は、蒼朮と大黄を加えている。
やせ型体質や、皮膚水分が少ないカサカサした皮膚では乾燥型の皮疹を生じ、空気の乾燥する冬季に憎悪する。
脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の中で乾燥型のもの、苔癬化局面を作るもの、痒疹型、毛庖性皮疹などは乾燥性皮疹であり、十味敗毒湯を中心に処方する。

【処方解説】
荊芥、防風、独活、柴胡・・・・・解表作用、止痒作用
柴胡、桔梗、桜皮、甘草、川・・・・・消炎作用、排膿作用
独活、茯苓・・・・・利湿作用

B. 消風散

荊芥、牛蒡子、防風、蝉退、蒼朮、木通、苦参、石膏、知母、地黄、胡麻、当帰

体質的に、皮膚に水分が多い乳児、水太りタイプの人は、皮疹の湿潤傾向が強く夏季に憎悪する。
利潤と潤燥という相反する薬物が配合されている。

【処方解説】
荊芥、牛蒡子、防風、蝉退・・・・・きょ風
蒼朮、木通・・・・・利湿
苦参、石膏、知母・・・・・清熱
地黄、胡麻、当帰・・・・・潤燥養血

【証(症候)の診断、弁症】
Ⅰ. 風証
皮膚病で風証というのは、掻痒と皮疹の拡大傾向である。
きょ風の薬物とは、鎮痒止痒の作用がある薬物を指す。
Ⅱ. 熱症
熱症とは炎症である。
皮疹をみてそれが熱かどうかは、皮疹の充血、発赤をみる。
皮疹が充血して赤く、触れて熱く感じるのは、熱症である。
清熱の薬物とは、抗炎症性の薬物である。
石膏、知母は、主に気分の熱を清し、生地黄、苦参等は、血分の熱を清す。
皮疹の場合、気分の熱というのは、炎症の初期、鮮紅色であり、充血を主とする。
血分の熱とは、少し炎症が古くなり、細胞浸潤と増殖性の炎症が伴うときである。
Ⅲ. 湿症
皮膚病における湿症とは、湿潤傾向である。
浮腫、液性丘疹、水泡、ビラン面からの利潤を湿疹と診断する。
Ⅳ. 血虚、血燥の証
血虚とは、皮膚の老化萎縮、乾燥をさす。
老人の皮膚にみられる。
皮膚が萎縮して薄くなり、汗腺、皮脂腺が少なくなり乾燥する。
乾燥して表皮が糠様の落屑を伴うようになると、痒みが生じる。
この場合、血虚生風という。
すなわち、萎縮乾燥して痒みを生ずるということである。
血燥とは、真皮に増殖性の炎症があり、乳頭が肥大し、表皮索は大きく、角下異常がおきて、表面が厚く鱗屑があって、乾燥し、内部は発赤充血と肥厚がある。
治法(論治、施治)      風証には、きょ風薬。  熱証には、清熱薬。
湿証には、利湿薬。 燥証には、潤燥薬。
を用いるのが、治法の原則である。
消風散という処方は、上記がすべて配合された処方である。
要約すると、消風散は、炎症性(充血)の皮膚疾患で、掻痒の強いものに用いる。

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