加齢に伴う疾患
当店でご相談の多い病気のひとつに「加齢に伴う病気」があります。
こちらのページでは、それぞれの病気についてご説明します。
目次
腰痛
腰痛と漢方
関節痛は、関節の周辺で生じる痛みです。
膝や肘、手指や足指の関節、腰、手首などに多く発症します。
年を重ねると内臓の老化も始まりますが、骨の老化も進んで行きます。
痛みがなかなか引かず、当薬局にもよくご相談をいただきます。
よくご相談があるのは、次のような病状です。
- 骨粗鬆症
- 脊柱管狭窄症
- 圧迫骨折
- 坐骨神経痛
- ぎっくり腰
- 椎間板ヘルニア
漢方薬で腰痛が治るということをご存知でない方が多いかと思いますが、解熱消炎鎮痛剤やコルセットでしのいでいる方は、一度試してみることをおすすめします。
解熱消炎鎮痛剤の効果と副作用
ロキソニンやボルタレン、冷シップ剤などの解熱消炎鎮痛剤を使い続けていると、全身の体温が下がり血流障害が起こってきます。
患部が急性の熱がある痛みの時は、解熱消炎鎮痛剤は効果的です。
しかし、長い間続けて使用していると、痛みは取り除くことができますが、血流障害が起こってきます。
血行が悪くなると足腰の冷えが強くなり、その結果、痛みや痺れが当初よりずっと強くなってしまうケースがあります。
また、強い鎮痛剤を日常的に服用すると、副作用で胃腸が悪くなってしまい、胃から消化管出血を起こす方もいます。
漢方による血流改善
漢方では、慢性的になってしまった痛みには、温めて治して行く方法を取ります。
血流を改善し、関節の痛みとってくれる漢方処方は数多く存在します。
特に、老化現象によって起こる関節の痛みは、腎虚という病態が絡んでいます。
四物湯という、当帰・川芎・芍薬・地黄の漢方薬をベースにした処方を使用します。
骨密度や筋肉の老化が、少しずつ改善されていきます。
あきらめず、続ける事が大切です。
全身の冷えを改善し、激痛だった脊柱管狭窄症の痛みが改善されたケースもあります。
冷えを改善することは、とても重要なことです。
冬は外気温の低下による冷えに、夏はクーラーの冷やし過ぎによる冷えに注意が必要です。
お腹の下の丹田、背中の風門と仙骨周辺、足元の三陰交を冷やさないように意識すると、血流改善により効果的です。
骨は使えば使うほど強くなる
私は、「骨は使えば使うほど強くなる」とお話し、腰痛体操や歩くことをお勧めしています。
腰痛や脊柱管狭窄症の方は、痛みや痺れが強いのでなかなか歩こうという気持ちになる方が少ないです。
しかし、3分でも5分でも、歩行器や杖を使ってでも頑張ってみてください。
痛みや痺れが改善します。
是非、ご自宅でできる運動療法を取り入れてほしいと思います。
当薬局では、漢方薬だけでなく、生活養生・食養生もあわせてお伝えしています。
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、50代・60代の太り気味の女性に多く起こってきます。
体重が重いので、膝に対する負担が大きくなってくるのです。
運動不足による筋力低下によって、骨を支える筋力も衰え、膝の血流障害が伴ってきます。
そして、膝関節症は組織破壊の病気となります。
変形性膝関節症と痛み止め
膝が痛いからと、貼る消炎鎮痛湿布薬(湿布)や塗る消炎鎮痛剤を使用してる方が大変多いです。
その時は一時的に痛みが取り除かれますが、消炎鎮痛剤には体を冷やす成分が入っており、血流障害が伴ってきます。
痛みが一時的に取れても、血流障害と慢性的な炎症が続くという、悪循環にはまっていきます。
治療と漢方
炎症が強く膝に水が溜まると、注射器で抜くことが行われていますが、漢方薬で水を抜くことも可能です。
炎症性浮腫を取り除いていく漢方薬を併用します。
まずは、①体重を落とすこと、②痛みが楽になったら運動をして筋肉をつけていくことです。
膝軟骨のすり減りを防ぐために、骨の老化予防作用、鎮痛作用のある漢方薬やサプリメントを併用します。
サポーターは圧迫による血行抑制が起こるので、あまりお勧めはしておりません。
サポーターで支えるよりも、体重を減らすことが最優先と考えるべきです。
運動は散歩ができないほど痛い場合は、体操をしたり、ヨガをしたり、膝に負担をかけないように、横になって行う体操をすると良いと思います。
仰向けになって自転車こぐような膝を動かすような運動も良いと思います。
またプールや大きなお風呂の中での歩行運動もおすすめです。浮力により、膝に体重がかからず、筋力トレーニングになります。
運動して動いた後に痛みがある場合は、まず熱を取るために冷やすことが重要です。
スポーツ選手が運動の後にアイシングをしていることがありますが、筋肉疲労の急性期は冷やす。
そして、痛みが強い急性期を過ぎたら温めるというのがスポーツ医学の基本です。それと同じように考えます。
炎症が強い時は冷やし、その後は温めて治していくということが重要です。
耳鳴り・難聴
耳鳴りの特徴と原因
どのような音が耳鳴りで聞こえるかによって、次のような特徴があります。
- キーンという高い音は、加齢とともに耳の機能が衰えると聞こえやすい音
- ジーンと蝉の鳴くような音は、突然耳の聞こえが悪くなる突発性難聴などで起こりやすい音
- ボーっという低い音の耳鳴りは、めまいを伴うメニエール病などの病気で聞こえやすく、また低音部が聞こえにくくなる前兆でも聞こえる音
耳鳴りは加齢によるものだけではなく、 脳の血流悪化が原因になっている場合があります。
脳の血の巡りが悪くなるのは、次のような場合です。
- 長時間のパソコン作業による慢性的な肩こり
- 睡眠不足
- 眼精疲労などのストレス
- 高血圧
耳をよく使う音楽関係の仕事をしている人も、首周辺の血行が悪くなって耳鳴りがする場合があります。
大きな原因は、ストレスの負荷による血流障害です。
交感神経の緊張が過剰になり血流障害を起こすのです。
一時的な耳鳴りは、血流を良くすると改善する可能性があります。
耳の後ろには、頭に血液を送る太い動脈が通っているため、適度な運動や入浴で温めると効果的です。
耳鳴りは、一生懸命何かに取り組んでいるときは気になりません。集中していると耳鳴りを忘れている人が多いです。
緊張がほぐれて副交感神経優位になる夜や寝る前に聞こえやすくなります。
耳鳴りに神経質になると、眠れなくなるなどの悪循環を生じかねません。
なかなか改善しづらい症状ですが、受け入れる・共存していくというスタンスに変わると、不思議なことに耳鳴りがさほど気にならなくなります。
また、風邪をひいたときに起こる「喉と耳の炎症」を繰り返しているうちに、聴力の低下と耳鳴りが起こるケースがあります。
加齢による耳鳴りの場合は、「血流改善」と「腎虚」に効く漢方薬を併用します。
風邪などの炎症から起こってくる場合は、炎症を抑えるために、清熱作用のある漢方薬を使用します。
また、突発性難聴、メニエール病による耳鳴りの場合は病態が違うため、以下の項でご説明いたします。
突発性難聴
突発性難聴は、突然片側の耳の聞こえが悪くなる病気です。
同時に、耳鳴り・耳が詰まった感じ・めまい・吐き気を生じることもあります。ただしめまいは、繰り返し起こりません。
精神的、肉体的ストレスを感じながら過ごしている交感神経緊張状態の時に、さらに何かの大きなストレスがかかり、増えすぎた顆粒球が炎症を起こし、突発性に内耳を破壊した状態と考えられます。
心身ともに安静にすることが重要です。
安静にすることによって内耳循環障害の改善を期待されますが、内耳神経は障害を受けると再生できません。
一般的には、血管拡張薬や、血栓による内耳循環障害の改善に抗凝固薬が用いられています。
代謝改善薬や抗神経ビタミン製剤との併用、ステロイド剤を投与される場合もあります。
また、鼓膜を介して中耳にステロイド剤を注入する方法もあります。
漢方薬を用いた本質的な治療は、体を温め、ストレスを取り除き、血液の循環を良くする漢方を服用することです。
メニエール病
メニエール病は30代後半から40代前半女性に多く、現代医学では原因不明とされている病気です。
性格は几帳面で神経質、精神的・肉体的な疲労、ストレス、睡眠不足などの状態にある人に、起こりやすい傾向があります。
内耳にある蝸牛、三半規管、前庭は、それぞれリンパ液の入った袋の構造をしており、内部で繋がっています。
通常はリンパ液が循環しながら吸収され、一定に保たれています。
メニエール病は、リンパ液が過剰に作られるか、または吸収障害によってリンパ液が余分に溜まり、内耳の水ぶくれ状態(内リンパ水腫)が起きている状態です。
そのため、回転性めまいと吐き気、難聴と耳鳴り、ふらふら感、冷や汗、顔面蒼白、脈が早くなるなどの症状が起ります。
回転性のめまいは数時間~数日で治りますが、難聴と耳鳴り、ふらふら感は続くことがあります。
こうした発作が数ヶ月もしくは数年に1度、繰り返し起こります。
交感神経緊張状態が強い生き方によって増えすぎた顆粒球は、三半規管で炎症を起こし、組織を破壊します。
ストレスを取り除き、交感神経緊張状態を緩和させることが大切です。
漢方では、血液の循環を良くする漢方、内耳の神経細胞や神経の活動を改善する漢方、水の代謝を良くする漢方を用います。
認知症
平均寿命が過去最高を更新
厚生労働省によると2019年の日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳、どちらも過去最高を更新しました。
寿命が伸び続けたのは医療の進歩と健康意識の向上が理由であると考えています 。
1番は感染症を克服できたこと
2番は血管が関係する病気の治療が進んだこと
3番は癌の治療が進んだこと
2012年における国内の認知症患者は約460万人で、高齢者人口(65歳以上)の15%でした。
2025年には高齢者の20%にあたる730万人が認知症になると厚生労働省は推計しています。
脳の健康寿命は以前と変わらず
色々な病気が治るようになってきましたが、体の寿命を延ばす・脳の健康寿命を延ばすにはまだ至っていません。
脳の仕組みや働きはかなり複雑であり、脳の健康寿命の限界は「認知症患者の増加」という形で現れています。
世界中の研究者が認知症の治療薬の開発にしのぎを削っています。
しかし現在まで効果的な治療薬というものがまだ完成されていません。
その最大の原因は脳の仕組みや働きが、まだ十分に分かっていないことです。
医学の進歩は目覚ましいですが、脳についてはまだわからないことが多いというのが現状なのです。
神経細胞一個一個の働き、脳内の地図は明らかになり、基本的な機能は解明されてきています。
それでも、まだ全体の10%~20%ぐらいの解明程度に過ぎないとも言われています。
脳の変化に早く気付くには
脳の変化に早めに気付くためのキーワードは、個人個人の「変化」です。
それまでの暮らしぶりがどのように変化していくか、何が違うかを見逃さないことが大切です。
SCD(Subjective cognitive decline:主観的認知機能低下)
検査で認知機能の低下は見られないが、次のような症状が現れます。これは、アルツハイマー病の初期症状です。
- なぜかイライラする
- 眠れなくなる
- 外出が億劫になる
- 趣味に楽しみを感じなくなる
- 度忘れが増える
- 同じ事を何度も聞くようになる
- 頭痛、胃痛が続く
MCI 軽度認知障害
物忘れが主な症状。日常生活に大きな支障はなく、認知症とまでは診断されない状態です。
認知症の前段階である「MCI」の10%から15%がアルツハイマー病へ移行すると考えられています。
日常の変化を判断するには、学校や会社で担ってきた役割を変わらずに果たせているかかどうかを確かめること、これまでの生活と比較することが一番良い方法と考えられています。
認知症を予防するには
認知症の予防は、次の3つの段階に分けて考えていきます。
第1次予防 発症させないこと
現在の医学では完全に予防することはできませんが、かからないように心がけることは可能です。
第2次予防 発症を遅らせること
生活を健康的に改善することで、発症リスクを下げる、遅らせることができます。
第3次予防 進行を遅らせること
認知機能の低下スピードを遅らせることが大切です。
認知症リスクが上がること、下がること
イギリスの権威ある医学雑誌『 ランセット 』に2017年に、認知症危険を高める「認知症の相対リスク」が掲載されました。
これは、次のような危険因子を持つ人が、危険因子を持たない人と比べて、どの程度認知症になりやすいかを示す倍率です。
- うつ病 1.9倍
- 社会的孤立 1.6倍
- 肥満 1.6倍
- 高血圧 1.6倍
- 喫煙 1.6倍
- 11~12歳までに教育が終了 1.6倍
- 糖尿病 1.5倍
- 運動不足 1.4倍
WHO は2019年に、認知機能低下と認知症のリスク減少について、12の指針を発表しています。
身体活動 | 有酸素運動や筋力トレーニング |
禁煙 | 喫煙が脳に及ぼす害は数々の研究が証明しています |
栄養 | バランスの取れた健康的な食生活 |
アルコール使用障害 | お酒の飲み過ぎに注意を呼びかけています |
認知機能 | エビデンスの質は低いものの、いわゆる脳トレの効果を認めています |
社会的活動 | 他人との交流が少なく孤独だと、認知症の発症率が高くなります |
体重管理 | 肥満は様々な病気の罹患率も高めると指摘しています |
高血圧の管理 | 認知症の機能低下・認知症の発症に高い関連があると警告しています |
糖尿病の管理 | 糖尿病による合併症も体に様々な害をもたらします |
脂質異常症の管理 | 総コレステロール値の上昇が、血管の病気リスクを高めます |
うつ病への対応 | うつ病は「認知症の前段階」である可能性が示されています |
難聴の管理 | コミュニケーション能力に悪影響を及ぼし、認知機能を低下させます |
以上のように、認知症のリスクは色々考えられますが、まとめると次のような点がとても大切であると整理することができます。
- 生活習慣病を改善すること
- 体重をコントロールすること
- お酒を飲みすぎないこと
- 社会とのつながりを維持すること
- 健康的で明るい生活を送ること
けんこう屋が考える「認知症予防と漢方」
少しでも早く衰えを気付き、若い頃から生活習慣病の予防と血管の老化を遅らせていくことが何よりも重要であると私は考えています。
漢方では?古代より皇帝の長生きする方法、永久に死なない仙人になる方法など盛んに研究されてきました。
中国では不老長寿の薬もたくさん考えられ、作られていました。
人間には天命というものがあります。
天より授かった寿命を健康で有意義に全うすることは人の務めと言えるでしょう
現代社会ではその天寿を全うする人が少ないのが現実です。
平均寿命はかなり延びましたが、寝たきりの人も少なくありません。
中国の最古の漢方医学書 「素問(そもん)」には、「天寿を全うし、100歳以上の長寿を保つための方法」が記載されています。
1 臓腑や身体を老化させないための養生法を心得る。(気功、導引(どういん)、体操療法、呼吸療法など)
2 自然界の法則に逆らわない
3 十分な睡眠をとる
4 暴飲暴食をしない
5 過労を避ける
6 セックスをしすぎない
7 仕事や人付き合いで無理をしない
8 精神的に穏やかに過ごす
私は、老化予防に良い食事を取ることも大切であると考えています。
漢方の食事療法や食養生の考え方は西洋医学理論と全く異なります自然や季節を重視し旬のものを食べるのが基本です体を温めたり冷やしたり季節や体調によって考えて毎日も食べるものも選んで取りたいものです認知症の予防的に良い漢方薬、血管の老化を遅らせる漢方薬を多く取り揃えております
早めに認知機能の衰えに気づき、対応されることをお勧めいたします
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