京都漢方研究会 講演 -山本巖先生の漢方療法2- 瘀血について①
2015年3月の京都漢方研究会における講演に引き続き、2018年5月13日に京都薬科大学で
以下の内容の講演を行いました。
「山本巖先生の漢方療法 ―難病に使用された駆瘀血剤の使い方―」
現在の日本の漢方では、理論が大きく二つに分かれている。
一つは、日本漢方。もう一つは中医学である。
日本漢方の昔ながらの証の考え方及び中医学の陰陽五行説からなる
基礎理論に関して科学的でないという指摘も多い。
その一方で、大学病院、漢方メーカーなどが中心になってEBM漢方を
確立したい方針もみられる。しかし「この証にはこの薬剤」という
パターン化した漢方利用だけでは、難病や慢性疾患には全く歯が立た
ないのが現状である。
恩師山本巖先生は、西洋医学の病態把握を重視し、東洋医学的な重要な
考えや生薬の薬能を取り入れ、薬物と病態との対応を中心にした診療を
実践され、自らの医学を大きく発展させた。誰が行っても再現性のある
漢方医学と考える。
また、山本先生は難治性疾患には必ず「瘀血」という病態を検討した。
山本先生の恩師漢方舎・中島紀一先生も、難治性疾患に対して「血証(瘀血)」
を重視され、「諸悪の根元は、血である。血というものを重視せよ。
病百のうち百まで、血で解決できる」と言われた。
現代医学では、微小循環不全の状態の概念が最も瘀血に近い病態と考えられ
ている。大きく捉えると静脈系のうっ血で、動脈系のうっ血は寒証による
血行不良が関与してくると考えられている。また、炎症性の充血は熱証に
相当するが、動脈側の血行の亢進にもかかわらず静脈側のうっ血が生じる。
これも瘀血と考えられる。
山本先生は瘀血に関して、
「古人が考えた臨床的仮説と近代医学の眼が捉える血液の停滞現象との間には
大きな距離がある。」
「治らない病は瘀血を考えよ。難治性の病、慢性疾患のほとんど総てに瘀血が
咬んで絡みあっている。」
「瘀血が単独で存在することは少ない。」
「瘀血とは駆瘀血剤を与えると改善される病態である。」という臨床家としての
貴重な経験や言葉を多く残された。
今回、京橋山本内科で難病に対して使用された活血化瘀薬、駆瘀血剤の解説を行い、
方剤の運用方法を述べた。
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