漢方薬の驚異 第23回 柴胡(さいこ)と 升麻(しょうま)
今年、最後のメールとなりました。
前回まで補益剤を中心にお話をしてまいりましたが、今回はその
中でも中心的な生薬のお話をさせてもらいます。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)の柴胡(さいこ)と升麻(しょうま)
です。
ご存知の様に、小柴胡湯(しょうさいことう)の中には柴胡が入って
おり柴胡(さいこ)と黄ごん(おうごん)が炎症を抑える作用を持って
いることが知られています。
このふたつの生薬により、小柴胡湯は消炎作用を有する処方として
臨床に使用されています。
一方、補中益気湯には柴胡と升麻(しょうま)が入っており、この作用
は筋肉を強くする作用があるのです。
よって、補中益気湯は筋肉の弱いアトニー体質の方にとても有効に働くと思います。
第二十回でお話した症状に良いのです。
☆アトニーや無力症の人は、元気なく食欲ない。
★直腸脱、肛門脱、子宮脱の人に。
☆弛緩性便秘に。
★膀胱麻痺、かつやく筋低下に。
違った生薬の組み合わせで、作用も変わってくるのが漢方薬の不思議です。
昔、原南陽という人が作った痔に効く漢方・乙字湯(おつじとう)という中
にも、柴胡と升麻が入っています。
この生薬の作用について、名医・浅田宗伯は柴胡と升麻の作用は
筋肉を強くする方と捉えず、消炎作用として捉えています。
その他、大黄(だいおう)と黄ごん(おうごん)も消炎作用を有していると
考えていました。
痔核の場合は、この乙字湯だけでなくて駆おけつ剤と併用するとより
症状が良くなります。
そこで、浅田宗伯は血の流れが良くなる当帰(とうき)を多く加えてより
痔に効く処方に改良したのです。
今後、現代薬学における生薬の成分分析研究だけでは計り知れない
生薬の薬能を臨床を通じて解明する事が、とても重要で有効な事と考えます。
一つずつの生薬の解明はもちろん大切ですが、二つ、三つとあわせた
時の薬能の解明も大切な事と思います。
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