『棺桶まで歩こう』在宅緩和ケア医 萬田緑平先生の考えとは

私は漢方薬剤師として、がん、免疫の病気などの難病のお客様を主に担当させていただいています。
私よりもっと不摂生している人がいるのに、どうして私が病気に?
どうしてこんな若さでこんな病気に?
そんなふうに話すお客様と多く接してきました。
今回、価値観に影響を受けるような本に出会いました。その本をご紹介させていただきます。
在宅緩和ケア医である萬田緑平先生は約30年間、大学病院の外科医として手術や抗がん剤治療、胃ろう造設などを行う中で、医療のあり方に疑問を持たれたそうです。
その後、群馬県で緩和ケアのクリニックを開業し、在宅緩和ケア医として2000人以上の看取りにかかわっています。
そんな萬田先生が昨年出版した本、『棺桶まで歩こう』がベストセラーになっています。
1.最期まで自分らしく生きる
終末期の患者さんの多くは、抗がん剤などの治療で体力が落ち、点滴やさまざまなチューブの処置を受けて、寝たきりになることがあります。
むくみで手足が腫れ、自力でトイレに行けなくなっても、家族から「頑張れ」「諦めないで」と励まされ、意識がもうろうとする中で治療を続ける人もいます。
こうした現場を長く見てきた萬田先生は、その経験から、終末期でも
- 亡くなる前日までトイレに歩く
- 下の世話にならない
ことを目標にすると、患者さんが生きる意欲を取り戻すことがあるのだそう。
在宅緩和ケアの自宅では、食べたいものを食べ、家族と話し、テレビを見て笑い、外出やゴルフを楽しむ人もいます。
家族と互いに感謝の気持ちを伝え合い、最期の日まで自分の足でトイレに行き、眠るように亡くなる人もいるそうです。
病院で治療を続けることだけが選択肢ではなく、治療をやめて自宅で穏やかな最期を過ごすという道がある、ということが分かります。
2.歩く力を最後まで保つ

萬田先生は、多くの症例から、「歩くスピードが、その人の余命」という考え方になったそうです。
目安として、次のように挙げています。
- 走れる人は余命80年
- 早く歩ける人は30年以上
- 歩ける人は10年以上
- 腕の力を使わず椅子から立てる人は1年以上
- 腕を使って介助が必要なら半年以内
- ちょこちょこ歩きしかできなければ数か月
- 歩けなければ1か月以内
これは医学的に余命を決める基準ではなく、歩く力と体力の関係を示す考え方です。
特に重要なのが、太ももの大腿四頭筋や体幹の筋肉であるとも述べています。
筋肉は使わないと衰えるため、「貯筋」が大切だとされています。
歩くときは、小股でちょこちょこ歩くのではなく、ゆっくり大股で歩き、片足になっている時間を長くする。
ふらついたときは体幹の筋肉を使い、壁などには軽く触れる程度にします。
筋肉は使うからこそ強くなる。
歩けるうちに筋肉を蓄え、できるだけ長く自分の足で動ける状態を保つことが目標です。
3.老化の進み方は人それぞれ

健康に良い食事や運動、サプリメント、医療など、さまざまな努力をしても、人は老化していきます。
ただし、その老化のスピードは一人ひとり異なります。
さらに、人によって老化のスピードが速い臓器と遅い臓器があるとされています。
顔や性格が人それぞれ違うように、臓器の寿命も異なるのです。
たとえばAさんは、脳100歳、肺90歳、目60歳、肝臓50歳、心臓110歳。
一方、Bさんは、脳60歳、肺70歳、目50歳、肝臓100歳、心臓100歳
というように、同じ人の中でも臓器ごとに寿命に違いがあります。
病気は「臓器や器官の老化」に名前をつけたもの、萬田先生はそう表現しています。
喫煙や肥満などは老化を早める原因になりますが、健康に気をつけていても老化そのものを止めることはできません。
だからこそ、「どこまで長く生きるか」だけでなく、「どのように生きるか」を考えることが大切になります。
4.死はソフトランディングできる

人は、だんだん元気がなくなり、食事や水分が減り、歩けなくなり、眠る時間が長くなります。
その後、深い眠りに入り、呼吸が弱くなり、最後に呼吸と心臓が止まります。
この経過は、1日で進む人もいれば、数年かけて進む人もいます。
その死への過程を、飛行機がゆっくりとソフトランディングする姿にたとえていたのが印象的です。
経年劣化でエンジンや翼が少しずつ弱り、機体が骨組みだけになるように、人も少しずつ痩せ、体の力が落ちていく。
死という運命に抗わず、自分のペースで低空飛行を続けていると、いつの間にか「死」に着陸している。そんなイメージだそう。
病院で治療を続けることだけが、人を生かす方法ではありません。
病状や残された体力に合わせて自宅でケアを受け、痛みや苦痛をコントロールして穏やかに最期を迎えられる場合もあります。
人は誰もが死を迎えます。
だからこそ、死を遠ざけることだけを目標にするのではなく、歩ける力を保ち、家族と過ごし、自分らしい時間を大切にする。
「最期まで目一杯生きる」ことが、悔いのない人生につながるのではないでしょうか。

どんな最期を迎えたいかを考えておくこと、その気持ちを家族に伝えること、家族はその気持ちを尊重すること
これがとても大切だと述べています。
患者本人の気持ちにかかわらず、家族が延命を強く希望し、亡くなっていく本人が最後まで点滴、チューブでつらい最期を迎えるケースが多いそう。
元気なときから、希望する最期の在り方について、家族と共有しておくことができるのが理想だと感じます。
気になった方は萬田先生の著書を読んでみませんか?
『棺桶まで歩こう』 萬田緑平 幻冬舎 2025/11/27発売
『家で死のう!』 萬田緑平 三五館シンシャ 2022/6/21発売

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