「腹を立てる」と「腹が据わる」 ~ 腸の炎症が脳の炎症につながる ~

腸の状態が悪くなると、全身や脳にも影響が出てくること、ご存知でしょうか?

腸に炎症があると、その炎症はダイレクトに脳に影響を与えます。

「脳腸相関」という言葉、聞いたことがある人もいるかもしれません。

文字通り、脳と腸は深くかかり合っていることを意味しています。

腸の炎症が脳のトラブルに結びつく理由は、まだ100%解明できているわけではありません。

目の荒くなった腸粘膜から侵入した、未消化のグルテンやカゼインといったたんぱく質の小さな物(ペプチド)が脳に少なからず影響を与えていると考えられています。

食事の乱れと腸内環境の悪化により、必要なビタミンやミネラルが不足した結果、セロトニン、メラトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の合成に、何らかの影響を与えているのではないかと考えられています。

良好な腸内細菌のバランスのもとでは、かなりの量のビタミンB群が産生されます。

その腸内細菌由来のビタミンB群は、吸収されて人の体で利用されます。

特に、抑制系の神経伝達物質の代表であるGABAは、ビタミンB群の不足で影響を受け、不足しやすいものです。

GABAの不足は

  • 中途覚醒・悪夢などの睡眠トラブル
  • 不安・興奮・衝動性などがたかぶること
  • 音や光などの刺激への敏感さ

などに関わると言われています。

さらに、痙攣など発達障害で問題になりやすい症状にも深く関係するとされています。

脳の神経伝達物質であるセロトニンは、ほとんどが腸に存在しています。

脳に実際に存在しているのはほんの数パーセントなのです。

セロトニンとは、うつ症状に大きく関わっている神経伝達物質です。

うつ病の治療薬である「SSRI」という名前の、セロトニンを増やす作用のある薬があることも知られていますね。

最近になり、腸におけるセロトニンの合成の状態が脳内のセロトニン構成に影響していることが分かり、腸内環境を整えることとうつとの関係の深さが言われるようになりました。

逆に、脳の状態が腸の状態に影響を与えることもあります。

例えば、イライラしたりカッとするなど興奮状態にあると、自律神経のうちの交感神経の神経細胞が刺激されて、腸に影響を与えることが分かっています。

攻撃性やイライラに繋がるノルアドレナリンというホルモンが腸管の中にまで放出されるのです。

すると、善玉菌と悪玉菌、そして日和見菌から構成される腸内細菌もバランスを崩し、日和見菌が悪玉化していきます

それまで悪さをしなかった日和見菌が、イライラや怒りによって悪玉菌化し、さらに腸の炎症を促進させてしまいます。

イライラしたりストレスを感じたりすると、下痢や便秘を起こす人がいます。

お腹の不調は、このような面からも説明できると考えます。

腸の炎症物質が体内に入ると、自律神経の調節を行う中枢である脳の視床下部に影響を与えて、脳の炎症につながっていくという負のスパイラルが始まります。

「腹を立てる」と言いますね。

よく言ったもので、脳でイライラがあると、腸にも影響するということが分かります。

一方で、落ち着いた動揺しない様子を「腹が据わる」と言いますね。

日本人は、昔から脳と腸との相関関係を感じていたのかもしれませんね。


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