漢方薬の驚異 第114号 お血(おけつ)の漢方 通導散 -1-

今まで生薬のお話でしたが、今回からおけつの漢方薬についてお話します。

第1回目は、通導散(つうどうさん)

漢方一貫堂医学の中でもとても重要な処方に
位置づけらていた漢方です。
中島紀一先生も大変に重要視されていた処方と
聞いています。

おけつを取る力もかなり強いので、山本先生も
この処方を多用されて多くの難病痼疾を治されて
いました。
しかし、やはり使い方を誤ると強力な瀉剤なので
注意が必要な処方と思います。

構成生薬は、

「当帰・紅花・蘇木・木通・陳皮・厚朴・
枳実・甘草・芒硝・大黄」

「古今医鑑 巻一六 折傷門」
跌撲損傷極めて重く、大小便通じず、乃ち
お血散ぜず、肚複膨張し、上って心複を攻め、
悶乱して死に至る者を治す。
先ず此の薬を服して死血、お血を打ち下し、
然る後、当に補損の薬を服すべし。
酒を用うべからず。
飲めば癒通せず。亦人の虚実を量りて用う。

昔、罪人の刑罰で百叩きの刑があったそうです。
その際に、罪人は叩かれて、打撲と傷が出来て
熱が出て悶乱して死に至りました。
そのような人に、使用して命を救った薬です。

一貫堂の森道伯先生は、関東大震災の時に
家屋の倒壊によって傷・打撲を受けた人々に、
多くの駆お血剤を多用したそうです。
その漢方薬の中でも、この通導散を使用されて
かなり多くの患者さんを救ったと思われます。
今で言う、クラッシュ症候群のような患者さんに
使用されたと予想されています。

山本先生は色々な文献を調べられて、
森道伯先生は震災後にこの通導散を多くの難病に
使用されていったのだろうと考えられていました。

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